
2026-05-21
税金・節税マイホームの売却・相続等で使える特例は?お得な税制とは
マイホームの売却や相続が発生した際には、一般の不動産と比べて大きく優遇された税制上の特例が複数用意されています。ただし、それぞれに細かい適用要件があり、要件を満たさなければ控除を受けることができません。主要な特例の内容と注意点を税理士の視点から解説します。
マイホーム(居住用財産)の売却や相続に関しては、税制上の優遇措置が多数設けられています。うまく活用すれば譲渡所得税を大幅に減らすことができますが、適用要件を一つでも満たさないと特例が使えなくなるため、事前の確認が欠かせません。代表的な特例を順に見ていきましょう。
■ ①居住用財産の3,000万円特別控除 最もよく知られているのが、マイホームを売却した際に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。たとえば4,000万円で売却し、取得費・譲渡費用を差し引いた譲渡所得が2,500万円であれば、この特例によって課税所得はゼロになります。 【主な適用要件】 ・現在自分が居住している家屋とその敷地の売却であること(転居後の場合は転居から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が必要) ・売却した年の前年・前々年にこの特例や後述の買換え特例を受けていないこと ・売主と買主が親子・夫婦などの特別関係にないこと 保有期間の長短に関係なく適用できる点が大きな特徴です。ただし、住宅ローン控除とは原則として併用できないため、買い替えの場合はどちらが有利かを試算したうえで選択する必要があります。
■ ②10年超所有の軽減税率特例 所有期間が売却した年の1月1日時点で10年を超えるマイホームを売却した場合、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に対して軽減された税率が適用されます。通常の長期譲渡所得税率が約20.315%であるところ、6,000万円以下の部分は約14.21%(所得税10.21%+住民税4%)になります。先述の3,000万円特別控除と併用することもできるため、10年超保有のマイホームを高額で売却する場合には特に大きな節税効果が期待できます。 【主な適用要件】 ・売却した年の1月1日時点で所有期間が10年超であること ・自分が居住している(いた)家屋とその敷地の売却であること(3,000万円控除と同様の居住要件あり)
■ ③特定の居住用財産の買換え特例 マイホームを売却して新たにマイホームを購入する場合、一定の要件を満たすと売却益への課税を将来に繰り延べることができる「買換え特例」があります。売却益に今すぐ課税されないため、手元資金を新居の購入資金に充てやすくなるメリットがあります。ただしこれは「非課税」ではなく「課税の繰り延べ」であり、将来売却した際に課税されます。 【主な適用要件】 ・売却した居住用財産の所有期間が売却年の1月1日時点で10年超、かつ居住期間が10年以上であること ・売却価格が1億円以下であること ・買換え先の床面積が50㎡以上であること ・売却年の前年から翌年末までに新居を取得し、取得の翌年末までに居住すること なお、3,000万円特別控除と買換え特例は併用できません。どちらを選択するかは譲渡益の額・新居の購入価格・将来の売却計画を踏まえて判断する必要があります。
■ ④被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除 相続で取得した実家(被相続人が居住していた家屋)を売却する際に使えるのが、空き家特例(正式名称:被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)です。相続によって空き家になった実家は、そのまま放置されるケースも多いことから、売却を促進するために設けられた特例です。最大3,000万円を譲渡所得から控除することができます。 【主な適用要件】 ・昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)であること、令和6年1月1日以降の売却からは、買主が売却後に耐震改修や取壊しを行う場合でも特例が適用できるよう要件が緩和されました ・相続の開始直前において被相続人が一人で居住していたこと(老人ホーム等への入居直前まで居住していた場合も一定の要件で対象) ・相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること ・売却価格が1億円以下であること ・相続から売却まで事業用・貸付用・居住用に使用していないこと 期限(相続後3年以内)を過ぎると適用できなくなるため、相続が発生したら早めに売却を検討することが重要です。
■ ⑤相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例 相続で取得した不動産を売却する際、相続税額の一部を取得費に加算できる特例もあります。取得費が増えることで譲渡所得が減り、結果として譲渡所得税を抑えることができます。相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)の翌日から3年以内に売却することが適用要件です。 なお、この特例と空き家特例(④)は原則として同一物件に対して同時に適用することはできません。どちらを選択するかは税理士と相談のうえ有利な方を選ぶことが重要です。
■ 特例適用の際に特に注意したいポイント ①確定申告が必須:いずれの特例も、適用を受けるためには確定申告が必要です。給与所得者であっても年末調整では対応できないため、売却した翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行う必要があります。②書類の準備:取得時の売買契約書・登記簿謄本・取得費の領収書類などが必要になります。古い物件ほど書類が散逸しているケースが多く、取得費が不明な場合は売却価格の5%しか取得費として認められません。売却前から書類の整理を進めておくことが大切です。③適用要件の複雑さ:各特例には細かい要件があり、自己判断での適用は誤りが生じやすいため、不動産の売却・相続が発生した際は必ず税理士に相談することをお勧めします。特に期限のある特例は手遅れになると取り返しがつきません。
■ まとめ マイホームの売却や相続には、一般の不動産取引にはない手厚い税制上の優遇措置が用意されています。3,000万円特別控除・10年超軽減税率・買換え特例・空き家特例・取得費加算の特例など、状況に応じて組み合わせることで節税効果を最大化できます。一方で、それぞれの適用要件は細かく、また選択を誤ると不利になるケースもあります。売却や相続の計画が生じた段階で早めに専門家へ相談し、最適な特例の組み合わせを検討することが、大切なマイホームの売却・承継を税制面からも成功させるための近道です。


