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マイホーム売却の3,000万円特別控除とは?適用要件と実務上の注意点を税理士が解説

2026-07-11

売却・出口戦略

マイホーム売却の3,000万円特別控除とは?適用要件と実務上の注意点を税理士が解説

マイホームを売却した際、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。所有期間を問わず使えるこの特例は非常に有利ですが、適用要件は細かく、実務上の判断が分かれるケースも多いです。税理士が要件を詳しく解説します。

マイホーム(居住用財産)を売却したとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」(租税特別措置法35条)は、不動産売却の場面で最も利用される特例のひとつです。所有期間の長短を問わず使えるため非常に強力ですが、適用要件は想像以上に細かく、実務上の判断が分かれる場面も少なくありません。本記事では要件を一つひとつ丁寧に解説し、実務上の注意点もあわせて説明します。

特例の基本:何がどこまで控除されるか

居住用財産を売却した場合、譲渡所得の金額から最大3,000万円を控除できます。譲渡所得が3,000万円以下であれば税額はゼロとなります。 所有期間は関係なく、短期(5年以下)でも長期(5年超)でも適用可能です。また、所有期間が10年を超える場合は軽減税率の特例(課税長期譲渡所得6,000万円以下の部分について所得税10%・住民税4%・復興特別所得税0.21%、合計税率14.21%)と同一年に併用して適用できます(適用順序は3,000万円控除が先)。 一方で、特定居住用財産の買換え特例(措法36条の2)と同一年・同一物件での併用はできません。どちらの特例がより有利かは譲渡価格・次の購入物件の価格等によって異なるため、計算を比較して選択することをお勧めします。

要件①:「居住の用に供していた家屋」であること

特例の対象となるのは、現に自分が居住している(または以前居住していた)家屋とその敷地です。この「居住の用に供していた」という要件が、実務上最も判断に迷うポイントです。 対象となるもの: 主として日常生活の本拠として使用していた自宅(一棟の建物のうち自己居住部分) 対象とならないもの: 別荘・セカンドハウス・週末のみ使用する家屋・転勤先の社宅等(主たる生活の本拠でないもの) 複数の住宅を所有している場合は、主として居住している家屋のみが対象です。「メインの自宅」と「週末の別宅」を両方持っている場合、別宅への適用はできません。 一部を賃貸・事業に使用している場合は、居住部分と非居住部分を面積比等で按分し、居住部分に対応する譲渡所得のみに特例が適用されます。例えば1階が店舗・2階が自宅という建物であれば、2階の居住部分に対応する譲渡所得のみが特例の対象となります。

要件②:「居住しなくなってから3年以内」の売却であること

引越し後に売却する場合、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。 具体例で確認します。2023年7月1日に引越した場合、「3年を経過する日」は2026年7月1日であり、その属する年の12月31日は2026年12月31日が期限となります。「3年以内」ではなく「3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という表現に注意が必要です。 実務上の注意: 引越し後に家屋を賃貸に出した場合、原則として特例の適用が認められなくなります。居住の用に供しなくなった後に賃貸として使用すると、居住用財産としての要件を満たさなくなるためです。個別の事情によって判断が異なる場合もありますが、空き家のまま期限内に売却することが基本です。この点は見落としがちな重要なポイントです。

要件③:土地だけの売却でも適用できるケース

家屋を取り壊して土地だけを売却する場合でも、以下のすべての要件を満たせば特例を適用できます。 ①家屋を取り壊した日から1年以内に売買契約を締結していること ②居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売買契約を締結していること ③家屋の取り壊し後、売買契約締結日まで、その土地を貸駐車場等の用に供していないこと 実務上の注意: ③の「土地を貸している」の解釈は厳格です。取り壊し後にコインパーキングや月極駐車場として貸し付けた場合はもちろん、知人の車を停めさせるなど一時的な利用であっても、対価を得て貸し付けている実態があれば適用できないリスクがあります。取り壊し後の土地は売却まで何も利用しないことが安全です。

要件④:特別の関係がある者への譲渡でないこと

以下の「特別の関係がある者」への売却には特例が適用されません(措法35条2項)。 | 特別の関係がある者 | 具体例 | |---|---| | 配偶者 | 法律上の配偶者 | | 直系血族 | 父母・子・祖父母・孫など | | 生計を一にする親族 | 同一家計の兄弟姉妹等 | | 売主が支配している法人 | 売主が実質的に支配する会社等 | 実務上の注意: 「孫への売却は大丈夫では?」と思われることがありますが、孫は直系血族であるため特例の適用はできません。また、離婚後の元配偶者は原則として「配偶者」に該当しないため適用可能ですが、離婚が「売却のための形式的な離婚」である場合は適用が認められないことがあります。

要件⑤:前年・前々年に同特例等を適用していないこと

3,000万円特別控除は同一の年に1回限り適用でき、売却した年の前年または前々年にすでに以下の特例を適用している場合は適用できません。 - 居住用財産の3,000万円特別控除(同特例) - 居住用財産の軽減税率の特例(措法31条の3) - 特定居住用財産の買換え特例(措法36条の2) 実務上の注意: 「2年前に別の自宅を売却して3,000万円控除を使った」という場合、今回の売却では適用できません。特例を適用した年から2年間はインターバルが必要です。複数の不動産を売却する順序を検討する場合は、この制限を踏まえてスケジュールを立てることが重要です。

実務上の判断が難しいケース

転勤・単身赴任中の家屋

売主が転勤・単身赴任中であっても、家族が引き続きその家屋に居住していれば「居住の用に供している家屋」として特例の対象になります。一方で、家族も含めて全員が転居した場合は、転居後3年以内(正確には前述の期限)に売却する必要があります。

相続した家屋の売却

被相続人が居住していた家屋を相続し、相続人自身は居住していない場合、通常の3,000万円特別控除(措法35条1項)は適用できません。ただし、昭和56年5月31日以前に建築された家屋を相続した場合で一定の要件を満たすときは、「被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除(空き家特例)」(措法35条3項)の対象になる場合があります。この2つは別制度であり、要件も異なるため混同しないよう注意が必要です。

建物を取り壊す前に売買契約を締結した場合

「更地にしてから引き渡す」という条件で売買契約を締結し、その後取り壊しを行う場合、売買契約締結時点で家屋が存在していれば、土地のみの譲渡ではなく家屋を含む居住用財産の譲渡として特例を適用できます。取り壊しのタイミングと契約日の前後関係が重要です。

申告は必ず必要

3,000万円特別控除は確定申告によってはじめて適用されます。「譲渡所得がゼロになるから申告不要」ではありません。特例を適用するためには、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。 また、10年超所有の軽減税率の特例や、損失が出た場合の損益通算・繰越控除など、関連する特例も同時に検討したうえで申告することをお勧めします。

税理士からのアドバイス

3,000万円特別控除は強力な特例ですが、「どのタイミングで売るか」「引越し後に賃貸に出していないか」「前年・前々年に特例を使っていないか」という3点が実務上最も重要なチェックポイントです。 特に「引越し後に賃貸に出してしまうと原則として特例が使えなくなる」という点は、知らずにいると大きな税負担につながります。マイホームを売却する予定がある場合は、売却前・引越し前の段階で税理士に相談することで、特例を確実に活用できる段取りを組むことができます。売却後に相談しても間に合わない場合があるため、早めの相談が重要です。

まとめ

居住用財産の3,000万円特別控除の主な要件は、①主たる居住用家屋(別荘・賃貸後の物件は不可)、②居住しなくなってから3年を経過する年の12月31日までの売却、③特別の関係者への売却でないこと(孫も不可)、④前年・前々年に同特例未適用です。土地だけの売却でも取り壊し後1年以内・貸付なしであれば適用可能です。適用には確定申告が必須であり、10年超所有の軽減税率特例との併用も検討してください。売却のタイミングと賃貸の有無が特例適用の明暗を分けることが多いため、売却前に税理士へ相談することをお勧めします。

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