
2026-07-04
運用・管理普通借家契約と定期借家契約の違いとは?契約の特徴・相続への影響を税理士が解説
賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があり、更新の有無や賃料の増減額請求の可否など、契約内容が大きく異なります。不動産投資や相続における税務上の影響も含め、税理士が実務的な観点から解説します。
賃貸物件のオーナーや不動産投資家にとって、どちらの契約形態を選ぶかは収益や出口戦略に大きく影響します。「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いを正確に理解しておくことは、長期的な不動産運用において重要です。本記事では、両者の法的な違いと、税理士の視点から見た実務上の注意点を解説します。
普通借家契約とは
普通借家契約(普通建物賃貸借契約)は、最も一般的な賃貸借契約の形態です。期間満了時に貸主が更新を拒絶するためには、「正当の事由」(借地借家法28条)が必要とされており、正当事由がない限り契約は更新されます。このため、貸主側からの立退き要求は容易ではなく、入居者保護が手厚い契約形態です。書面・口頭のいずれでも契約は成立します。
定期借家契約とは
定期借家契約(定期建物賃貸借契約)は、借地借家法38条に基づき、契約期間の満了をもって更新なく終了する契約形態です。更新がないため、貸主にとっては期間終了後に確実に物件を取り戻せるメリットがあります。ただし、有効に成立させるには①書面(電子契約を含む)による契約締結、②契約前に借主へ「更新がなく期間満了で終了する」旨を書面(電磁的方法を含む)で説明(事前説明義務)の2つの要件が必要です。いずれかを欠くと普通借家契約として扱われる可能性があるため、手続きの漏れには注意が必要です。
普通借家と定期借家の比較
| 項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
|---|---|---|
| 契約の更新 | あり(正当事由なければ更新拒絶不可) | なし(期間満了で終了) |
| 締結方法 | 書面・口頭どちらも可 | 書面(電子契約を含む)が必要 |
| 事前説明義務 | なし | あり(書面または電磁的方法による説明が必要) |
| 賃料の増減額請求 | 原則認められる(不減額特約は無効) | 特約で排除可能 |
| 入居者の保護 | 強い | 相対的に弱い |
税理士からみた注意点①:賃料・収益計算への影響
定期借家契約は、更新がないため借主のリスクが高く、一般的には普通借家契約より賃料が低めになる傾向があります。ただし、高級住宅・タワーマンション・法人契約などでは必ずしもそうではないため、物件ごとに賃料水準を確認することが重要です。また、定期借家契約では賃料の増減額請求権を排除する特約を有効に設定できる(借地借家法38条7項)ため、長期的な賃料収入の安定を図りやすい一方、市場賃料との乖離が生じた場合でも賃料の見直しがしにくいケースがある点に注意が必要です。
税理士からみた注意点②:相続税評価への影響
賃貸中の不動産は、空室の自用不動産と比較して相続税評価額が低くなるという特徴があります。具体的には、建物の評価額は「自用家屋の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で計算され、借家権割合は全国一律30%です。また、敷地(貸家建付地)の評価額も「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」として低く評価されます。なお、賃貸割合は実際に入居者がいる部分の割合であるため、空室部分は評価減の対象になりません。相続対策として不動産を活用する場合は、この賃貸割合が評価に大きく影響します。
税理士からみた注意点③:立退料の取り扱い
普通借家契約では、オーナーが借主に退去してもらうために立退料を支払うケースがあります。立退料の税務上の取り扱いは、支払う目的・タイミングによって異なります。物件取得後しばらく賃貸を継続していた後に入居者へ支払う立退料は、原則として不動産所得の必要経費(損金)として処理できます。一方、取得当初から建替え・売却目的で入居者を退去させるために支払った立退料は、土地・建物の取得価額に算入されるケースがあるため、取得の経緯と支払い時期を整理しておくことが重要です。
どちらの契約形態を選ぶべき?
| ケース | おすすめの契約形態 |
|---|---|
| 長く入居してもらいたい | 普通借家契約 |
| 将来的に売却を検討している | 定期借家契約 |
| 建替え・リノベーション予定がある | 定期借家契約 |
| 相続対策として長期保有を前提とする | 普通借家契約が多い |
| 法人との契約・期間を明確にしたい | 定期借家契約も多い |
税理士からのアドバイス
定期借家契約は、書面要件・事前説明義務を一つでも欠くと普通借家として扱われるリスクがあります。特に自主管理の場合、契約書の形式が不十分なまま運用されているケースも散見されます。既存の賃貸契約が普通借家か定期借家か、また書面の要件を満たしているかを改めて確認しておくことをお勧めします。また、相続対策として賃貸経営を活用している場合は、賃貸割合の維持(空室対策)が相続税評価にも直結する点を意識した運用計画が重要です。
まとめ
普通借家契約は入居者保護が強く、定期借家契約は期間満了で確実に終了できるという大きな違いがあります。税務面では、賃貸割合が相続税評価に影響する点、立退料の費用計上可否が支払い目的・タイミングによって変わる点、定期借家での賃料増減額請求排除特約の有効活用など、実務的な判断が求められる場面が多くあります。契約形態の選択や変更を検討する際は、税理士や不動産の専門家に相談しながら進めることをお勧めします。


