
2026-06-24
税金・節税不動産の時価とは?親族間売買・相続・贈与で問題になる価格の考え方を税理士が解説
不動産の時価には、株式のような市場価格のような単一の「正解」がありません。しかし、合理的な根拠のない価額は時価として認められないのも事実です。相続・売買・贈与の各場面で実務上どのような時価の概念が使われているのか、税理士が解説します。
不動産の「時価」には、上場株式のような客観的な市場価格が存在しません。そのため「いくらが正解か」という問いに一つの答えはありませんが、合理的な根拠のない価額は時価として認められない点も実務上重要です。本記事では、相続・売買・贈与の各場面で実務上どのような時価の考え方が使われているのかを税理士が解説します。
不動産の「時価」とは
時価とは、一般的には「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合に通常成立すると認められる価額」を指します。不動産は個別性が強く、同じ物件が二つとないため、株式や金融商品のように一つの市場価格で表すことができません。そのため、実務では複数の根拠を組み合わせて時価を推定することになります。
実務で使われる時価の根拠①不動産鑑定評価
不動産鑑定士による鑑定評価は、最も専門的・客観的な時価の根拠とされています。取引事例比較法、収益還元法、原価法など複数の手法を用いて算定されるため、訴訟や税務調査での説明力が高い一方、鑑定費用や時間がかかる点がデメリットです。
実務で使われる時価の根拠②売買実例・取引相場
近隣の売買実例や不動産業者が示す取引相場(査定額)も、時価を推定する有力な根拠となります。ただし、個別の取引事情(売主の事情による値下げ、親族間取引など)が反映されている場合は、そのままでは合理的な時価とは認められないことがあります。
実務で使われる時価の根拠③路線価・固定資産税評価額
相続税法22条では、相続・贈与により取得した財産は「時価」によって評価することが原則として定められています。「財産評価基本通達」は、この時価を実務上どのように算定するかを定めたルールであり、国税庁が公表する路線価や固定資産税評価額をもとに評価額を算出します。路線価は公示地価のおおむね80%程度、固定資産税評価額は70%程度を目安に設定されており、時価そのものではなく、時価を簡便に算出するための指標である点に留意が必要です。なお、近年の最高裁判決(いわゆる総則6項事件)以降、通達による評価額が常に絶対的な時価として認められるわけではないことがより明確になっています。
相続・贈与における時価の考え方
相続税・贈与税では、原則として財産評価基本通達に基づく評価額を用いて時価を算定します。ただし、著しく低い価額で個人間の不動産売買(低額譲渡)が行われた場合には、差額部分について贈与とみなされる可能性があります(相続税法7条)。「いくらまでなら低額譲渡に当たらないか」については明確な基準はなく、個別の事情に応じて時価を合理的に説明できるかどうかが問われます。
売買における時価の考え方
個人が法人や個人に対して著しく低い価額で不動産を譲渡した場合、所得税法59条により、時価で譲渡したものとみなして譲渡所得税が課税される(みなし譲渡)ことがあります。著しく低い価額で譲渡した場合には、みなし譲渡課税の対象となる可能性がある点に注意が必要です。
税理士からのアドバイス
不動産の時価には絶対的な正解がない一方、「なぜその価額にしたのか」を合理的に説明できる根拠を準備しておくことが税務上のリスク回避につながります。相続・贈与・親族間売買など、時価が問題となりやすい場面では、不動産鑑定評価や複数の取引相場資料を取得し、税理士に相談した上で価額を決定することをお勧めします。
まとめ
不動産の時価には単一の正解がない一方で、合理的な根拠のない価額は税務上認められません。不動産鑑定評価、売買実例、路線価・固定資産税評価額など、場面に応じた時価の考え方を理解し、相続・売買・贈与の際には専門家に相談しながら適切な価額を検討することが重要です。


