
2026-06-23
税金・節税不動産の現物出資とは?手続きと税務上の注意点を税理士が解説
会社の設立時や増資の際に、個人が所有する不動産を出資する「現物出資」という方法があります。金銭出資とは異なり検査役の調査や不動産鑑定士の鑑定評価が必要になるほか、個人側には譲渡所得税が発生する点にも注意が必要です。手続きの流れと税務上の注意点を税理士が解説します。
会社を設立するときや増資をするとき、金銭の代わりに個人が所有する不動産を出資する「現物出資」という方法があります。手元資金を使わずに会社の資本を増やせる一方、金銭出資に比べて手続きが煩雑で、税務上も注意すべき点が多くあります。本記事では、不動産を現物出資する際の手続きと税務上の注意点について税理士が解説します。
なぜ現物出資をするのか
現物出資は、個人で保有している賃貸不動産を資産管理会社へ移転する際や、不動産を活用して会社設立時の資本金を確保したい場合などに利用されます。
現物出資とは
現物出資とは、金銭以外の財産(不動産、車両、有価証券など)を出資の対象とすることです。個人が所有する不動産を会社に現物出資すると、その不動産は会社の資産となり、出資者は出資額に応じた株式(持分)を取得します。 会社設立時の出資としても、設立後の増資としても利用できますが、いずれの場合も出資する不動産の価値を適正に評価する手続きが必要になります。
不動産を現物出資する際の手続き
①検査役の調査(原則)
会社法上、現物出資を行う場合は、原則として裁判所が選任する検査役による調査を受けなければなりません。検査役は出資財産の価額が定款に記載された金額に比べて不当でないかを調査し、裁判所に報告します。この手続きには相応の時間とコストがかかります。
②検査役調査が不要になる例外
会社法33条10項では、一定の場合に検査役の調査が不要となる例外が定められています。代表的なものは、出資財産の総額が500万円以下である場合、市場価格のある有価証券で、その市場価格を超えない場合、そして弁護士・税理士・不動産鑑定士等の証明(不動産については不動産鑑定士の鑑定評価も必要)を受けた場合です。 不動産については、不動産鑑定士の鑑定評価だけで例外の要件を満たすわけではなく、会社法33条10項4号が求める「弁護士・公認会計士・税理士等の証明」と組み合わせる必要があります。実務上は、不動産鑑定士の鑑定評価を基礎として、これに弁護士・税理士等による会社法上の証明を取得する方法が多く用いられています。
③定款への記載・登記手続き
現物出資を行う場合は、定款に出資者の氏名、出資財産(不動産)の内容、その価額、付与する株式数を記載する必要があります。会社設立後は、出資された不動産について会社名義への所有権移転登記を行います。
税務上の注意点
①個人側に譲渡所得税が発生する
不動産を現物出資すると、個人から会社へ不動産を譲渡したのと同じ扱いとなり、個人側には譲渡所得税が課税されます。これは現物出資によって対価を得ていなくても、出資した時点の時価で譲渡があったものとみなされる(みなし譲渡)ためです。出資の対価として株式を受け取るだけであっても、税務上は売却と同様に取得費や所有期間に応じた譲渡所得税の計算が必要になります。
②出資価額と時価のズレに注意
現物出資する不動産の評価額(出資価額)と実際の時価にズレがある場合、税務上の問題が生じることがあります。特に、著しく低い価額で出資した場合には、会社側に受贈益課税等の問題が生じる可能性があります。不動産鑑定士による適正な鑑定評価を取得し、時価に近い価額で出資することが重要です。
③不動産取得税・登録免許税が発生する
現物出資による不動産の取得は、通常の売買による取得と同様に扱われるため、会社側には不動産取得税・登録免許税が課税されます。現物出資だからといって、これらの税負担が軽減される特例があるわけではない点に注意が必要です。
④消費税の取り扱い
出資者が個人であっても、その不動産が事業用(賃貸用等)に使われていた場合や、出資者が課税事業者に該当する場合には、現物出資による不動産の移転が消費税の課税対象となる可能性があります。出資者が事業者に該当するかどうか、対象不動産の用途を踏まえて事前に確認しておく必要があります。
税理士からのアドバイス
不動産の現物出資は、手元資金を使わずに資本を増強できる反面、検査役調査や鑑定評価といった手続きの負担、個人側の譲渡所得税、会社側の不動産取得税・登録免許税など、想定以上にコストと手間がかかる手法です。出資を検討する段階で、不動産鑑定士や司法書士、税理士と連携し、手続きと税負担の両面から事前に十分な検討を行うことをお勧めします。
まとめ
不動産の現物出資は、会社設立・増資の手段として有効ですが、検査役調査(または鑑定評価による例外適用)、定款記載・登記といった手続きと、個人側の譲渡所得税、会社側の不動産取得税・登録免許税など税務上の負担を正しく理解しておく必要があります。実行前には専門家への相談を強くお勧めします。


