
2026-05-27
税金・節税不動産所得の確定申告|計算方法と経費になるもの・ならないものを税理士が解説
確定申告は税理士に任せているオーナーも多いですが、自身で概算を把握できると経営判断の質が上がります。不動産所得の計算構造・収入と経費の範囲・青色申告の活用など、オーナーが知っておきたいポイントを税理士が解説します。
不動産賃貸業を営む個人オーナーにとって、毎年の確定申告は避けて通れません。多くの方が税理士に申告を依頼していますが、「税理士任せ」では自分の経営状態を正確に把握できないというリスクがあります。税額の計算は専門家に任せるとしても、不動産所得の計算の仕組みと主なポイントをオーナー自身が理解しておくことで、経営の改善点を見つけたり、税理士との打ち合わせをより有効に活用できるようになります。
■ 不動産所得の基本計算式 不動産所得の計算はシンプルです。 「不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費」 この計算でプラスになれば不動産所得として他の所得(給与所得など)と合算して課税対象になります。マイナスになれば不動産所得の赤字として給与所得などと損益通算することができます(一定の制限あり)。シンプルな式ですが、「何が収入に入るか」「何が経費になるか」の判断が実務のポイントになります。
■ 総収入金額に含まれるもの 以下は不動産所得の収入として計上する必要があります。 ①賃料収入:月々の家賃はもちろん収入です。未収の家賃も、その年に受け取る権利が発生していれば収入に計上します(発生主義)。 ②共益費・管理費:入居者から受け取る共益費や管理費も収入に含まれます。 ③礼金・更新料:入居時の礼金や契約更新時の更新料は受け取った年の収入として計上します。 ④駐車場収入:建物に付随する駐車場の使用料も収入です。 ⑤返還不要な敷金・保証金:敷金や保証金は原則として預かり金であり収入ではありませんが、契約上返還しないことが決まっている部分(礼金的性格のもの)は収入として計上する必要があります。
■ 必要経費に算入できる主な項目 不動産所得の計算で認められる主な経費は以下のとおりです。 ①固定資産税・都市計画税:毎年課税される不動産保有コストは全額経費になります。 ②損害保険料(火災保険・地震保険等):長期一括払いの場合は年割りで按分して計上します。 ③修繕費:原状回復を目的とした修繕は経費になります。ただし価値を高める資本的支出は減価償却が必要です(詳細は別記事参照)。 ④管理委託費:管理会社への委託手数料は全額経費になります。 ⑤借入金の利息:ローンの利息部分は経費になります。ただし土地取得に対応する借入金の利息は、不動産所得が赤字の場合に損益通算の対象外となる点に注意が必要です(土地負債利子の規定)。 ⑥減価償却費:建物・設備の取得費を法定耐用年数にわたって費用化します。実際の現金支出は伴いませんが、大きな経費項目となり節税効果に直結します。 ⑦広告宣伝費・仲介手数料:入居者募集にかかる費用は経費になります。 ⑧税理士費用:不動産賃貸に関する税務申告の報酬は経費として認められます。
■ 青色申告特別控除の活用 確定申告を青色申告で行うと、不動産所得からさらに特別控除を受けることができます。 ①10万円控除:簡易な帳簿を作成している場合に適用できます。 ②65万円控除(最大):複式簿記による帳簿作成、電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存を行っている場合に適用できます。所得税・住民税の計算上、最大65万円が所得から差し引かれるため、年収・税率によっては10〜20万円以上の節税効果があります。 不動産賃貸業では、青色申告の届出を税務署に提出しておくことが節税の第一歩です。白色申告のままにしておくと、この控除が受けられません。
■ 事業的規模かどうかで変わること(5棟10室基準) 不動産の貸付が「事業的規模」かどうかによって、税務上の取り扱いが異なります。一般的な判断基準は「5棟10室基準」で、独立した建物であれば5棟以上、区分所有や部屋数であれば10室以上の貸付を行っている場合に事業的規模と認定されます。 事業的規模に該当すると、以下の点で有利になります。 ・青色申告特別控除が最大65万円(非事業的規模の場合、複式簿記等の要件を満たさなければ10万円が原則となります) ※5棟10室未満であっても、複式簿記で厳密な帳簿(貸借対照表など)を作成すれば65万円控除を受けることは制度上可能ですが、実務的なハードルが非常に高いため、基本的には「事業的規模になってから65万円控除を目指す」のが一般的な目安となります ・青色事業専従者給与を経費にできる(配偶者など家族への給与) ・回収不能の家賃(貸倒損失)を経費にできる 保有物件数が少ない方は現在どちらに該当するかを把握しておくことが重要です。
■ オーナー自身が概算把握するための実践ポイント ①年間の家賃収入の合計を把握する:全物件の月額賃料×12ヶ月を合計するだけで年間収入の概算がわかります。空室期間があれば実際の入金額で集計しましょう。 ②主要な経費を3つに分けて把握する:「固定費(固定資産税・保険料・管理費)」「変動費(修繕費・広告費)」「資金負担なし(減価償却費)」の3つに分類すると、キャッシュフローと税務上の利益のズレが把握しやすくなります。 ③ローン返済のうち「利息」と「元本」を区別する:ローン返済額のうち経費になるのは利息部分のみです。元本返済は経費になりません。毎年の返済スケジュール表(返済予定表)で利息額を確認しましょう。 ④減価償却費を把握する:税理士から受け取る申告書や減価償却明細表を確認し、各物件の減価償却費がいつまで計上できるかを把握しておくことで、将来の税負担の変化を予測できます。
■ まとめ 不動産所得の計算は「収入 − 経費」というシンプルな構造ですが、何が収入に入るか・何が経費になるか・どの特例が使えるかの判断には専門知識が必要です。税理士に申告を依頼しながらも、オーナー自身が基本的な計算構造を理解しておくことで、日々の経営判断の精度が上がり、税理士との打ち合わせもより実りあるものになります。毎年の申告書を受け取った際にはぜひ内容を確認し、気になる点は担当税理士に質問してみてください。


