
2026-05-30
税金・節税不動産の相続税評価額の計算方法|土地(路線価方式)・建物の評価を税理士が解説
相続が発生した際の不動産評価は、適用する特例や評価方法の選択次第で相続税額が大きく変わります。令和8年税制改正で一部特例が封じられる部分もあります。土地・建物の評価の基本から重要な特例まで、税理士が実務ベースで解説します。
相続財産の中で不動産(土地・建物)が占める割合は非常に高く、特に都市部では相続財産の大半が不動産というケースも珍しくありません。相続税の計算において不動産をいくらで評価するかは、最終的な相続税額を左右する最重要のポイントです。同じ不動産でも、評価方法や特例の適用の有無によって評価額が何割も変わることがあります。正しく評価することが、相続税の適正な申告と節税の両面で不可欠です。
■ 土地の評価方法:路線価方式と倍率方式 土地の相続税評価には2つの方式があります。 ①路線価方式:市街地などの路線価が設定されているエリアで使用します。「路線価(1㎡あたり)× 各種補正率 × 地積(㎡)」で評価額を計算します。路線価は国税庁が毎年7月に公表し、公示価格の約80%を目安に設定されています。 ②倍率方式:路線価が設定されていない農村部・山間部などで使用します。「固定資産税評価額 × 評価倍率」で計算します。倍率は国税庁の評価倍率表で確認できます。 どちらの方式を使うかはエリアによって決まっており、選択できるものではありません。
■ 土地評価の補正:形状・状況によって評価額は下がる 路線価をそのまま面積に掛けるだけでなく、土地の形状・状況に応じた各種補正率を乗じることで評価額を適正に下げることができます。主な補正の種類は以下のとおりです。 ①奥行価格補正:道路からの奥行距離が長すぎる・短すぎる土地は評価が下がります。 ②不整形地補正:三角形・L字形など正方形・長方形でない変形した土地は補正で評価が下がります。 ③間口狭小補正:道路に接する間口が狭い土地は評価が下がります。 ④がけ地補正:傾斜のある崖地部分がある場合に適用されます。 これらの補正を正しく適用すると、単純計算より評価額が10〜30%以上低くなるケースもあります。補正の適用漏れは税務上の過払いにつながるため、専門家による正確な評価が重要です。
■ 建物の評価 建物の相続税評価額は、「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額となります(自用の建物の場合)。固定資産税評価額は市区町村が算定し、再建築価格をベースに経年劣化による減価を加味した金額です。一般的に実勢価格(市場での売買価格)より大幅に低くなっています。 賃貸に供している建物(貸家)の場合は、「固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合 × 賃貸割合)」で評価します。借家権割合は全国一律30%のため、満室であれば固定資産税評価額の70%が評価額となります。
■ 賃貸不動産(貸家建付地)の土地評価 賃貸住宅の敷地となっている土地(貸家建付地)は、自用地(自分で使用している土地)より低く評価されます。 「自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」 例えば借地権割合60%・借家権割合30%・満室(賃貸割合100%)の場合、自用地評価額の82%(1 − 0.6 × 0.3 × 1.0 = 0.82)が評価額となります。つまり、自用地より18%低い評価になります。この評価減が従来の賃貸不動産による相続税対策の根拠の一つでしたが、後述の令和8年改正により一部制限されます。
■ 小規模宅地等の特例:最大80%の評価減 相続税における土地評価で最も影響が大きい特例が「小規模宅地等の特例」です。一定の要件を満たす宅地について、評価額を大幅に減額できます。 ①特定居住用宅地等(自宅の敷地):330㎡まで評価額が80%減額されます。配偶者が相続する場合は要件が緩く、同居親族や一定の別居親族が相続する場合にも適用できます。 ②特定事業用宅地等(事業用の敷地):400㎡まで評価額が80%減額されます。被相続人が事業を営んでいた土地が対象です。 ③貸付事業用宅地等(賃貸物件の敷地):200㎡まで評価額が50%減額されます。賃貸アパート・マンションの敷地などが対象です。 この特例の適用の有無・適用面積によって評価額が数千万円単位で変わることがあり、相続税額への影響は極めて大きくなります。適用要件(誰が相続するか・申告期限までに何をするか等)が細かく規定されているため、専門家への相談が必須です。
■ 令和8年税制改正:貸付用不動産の評価見直し 令和8年税制改正大綱では、相続・贈与の前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産について、従来の路線価ベースの評価ではなく「通常の取引価額(市場価格)」または「取得価額を基礎に地価変動等を考慮した価額の80%」で評価することとされました(令和9年1月1日以降の相続・贈与から適用予定)。 これにより、「現金を賃貸不動産に換えることで相続税評価を大幅に圧縮する」という従来型の対策の効果が、前5年以内の取得分については大きく制限されることになります。また不動産小口化商品も取得時期を問わず市場価格ベースの評価となります。 一方、5年超前に取得した賃貸物件や自用地・自宅については従来どおりの評価が維持されます。改正の影響を正確に把握するためには、保有物件の取得時期と評価方法を専門家とともに確認することが重要です。
■ まとめ:不動産評価は「適正に下げること」が相続税対策の基本 相続税における不動産評価は、ただ機械的に路線価×面積で計算するだけでは済みません。各種補正率の適用・貸家建付地評価・小規模宅地等の特例の活用など、適正に評価することで相続税額を合法的に抑えることができます。一方で、令和8年改正のように従来の節税スキームが封じられる動きもあります。相続対策は「今の制度のもとで何ができるか」を早めに把握し、計画的に進めることが重要です。不動産の相続税評価については、不動産に精通した税理士へ早めにご相談されることをお勧めします。


