
2026-06-21
売却・出口戦略不動産のリースバックとは?仕組みと税務上の注意点を税理士が解説
自宅を売却して資金を得ながら、そのまま賃貸として住み続けられる「リースバック」。高齢者の老後資金確保や資金繰り対策として注目されていますが、譲渡所得税の特例適用や相続税評価への影響など、税務上押さえておくべき注意点を税理士が解説します。
自宅を売却して資金を得ながら、そのまま賃貸として住み続けられる「リースバック」は、高齢者の老後資金確保や、資金繰りに悩む方の選択肢として注目されています。一方で、売却・賃貸という二つの契約が組み合わさる仕組みであるため、税務上押さえておくべき注意点も少なくありません。本記事では、不動産オーナー向けにリースバックの仕組みと税務上の注意点を税理士が解説します。
リースバックとは
リースバックとは、自宅などの不動産を売却し、買主(投資家や専門業者)と賃貸借契約を結ぶことで、引っ越しをせずに同じ家に住み続けられる仕組みです。 売却によってまとまった資金を得られる一方、所有権は買主に移るため、その後は賃借人として家賃を支払いながら居住することになります。老後資金の確保、事業資金の調達、相続対策など、さまざまな目的で活用されています。
リースバックを利用する際の税務上の注意点
①譲渡所得税と3,000万円特別控除
自宅を売却するため、売却益(譲渡所得)が生じれば譲渡所得税(申告分離課税)の対象となります。マイホームの売却には「3,000万円特別控除」を利用できる可能性がありますが、この特例は配偶者や直系血族、同族会社など「特別な関係がある人」への売却には適用されません。 リースバックの買主が、自分の家族が経営する会社など特別な関係にある場合は、特例が使えない可能性があるため、契約前に確認が必要です。
②家賃は経費にならない
リースバック後に支払う家賃は、あくまで個人の生活費(居住費)であり、所得税の計算上、経費として差し引くことはできません。賃貸経営など事業のために利用している部分がある場合を除き、原則として家賃の支払いによる税務上のメリットはない点を理解しておく必要があります。
③固定資産税・都市計画税の負担がなくなる
売却によって所有権が買主に移転するため、固定資産税・都市計画税はリースバック後は買主(新所有者)が負担します。これまで所有者として負担していた税金がなくなる点は、リースバックのメリットの一つです。
④将来の買い戻しと税務上の取り扱い
リースバック契約には、将来一定の価格で買い戻せる「買戻し特約」が付くケースや、売買契約とは別に買戻しに関する契約が結ばれるケースがあります。買い戻しを行う場合、これは新たな不動産の購入として扱われ、不動産取得税・登録免許税などが再度発生します。買い戻し価格は売却価格より高く設定されることが一般的なため、トータルでのコストを事前に把握しておくことが重要です。
相続対策として利用する場合の注意点
自宅をリースバックすることで、不動産という資産が現金(売却代金)に変わります。不動産は相続税評価額が時価より低くなる傾向があるのに対し、現金は額面どおりに評価されるため、相続税の計算上は不利になる可能性があります。 資金を生前に使い切る、または別の節税対策(生前贈与等)と組み合わせるなど、相続税への影響も含めて検討することが重要です。
リースバック利用時に確認しておきたいポイント
・売却価格が市場価格より低めに設定されることが多い(相場は市場価格の70〜80%程度ともいわれます) ・家賃の設定が、売却価格に対する利回りを基準に決められるため、長期間住み続けると家賃の総額が売却価格を上回ることもある ・賃貸借契約の期間や更新条件(普通借家契約か定期借家契約か)によって、住み続けられる期間が異なる これらの条件は契約によって大きく異なるため、複数の業者から条件を比較することをお勧めします。
税理士からのアドバイス
リースバックは、自宅に住み続けながら資金を確保できる便利な仕組みですが、譲渡所得税の特例適用可否、相続税評価への影響、買い戻し時の追加コストなど、税務上検討すべき点が多い取引です。契約内容によって税負担が大きく変わることもあるため、契約前に税理士へ相談し、税務上のシミュレーションを行うことをお勧めします。
まとめ
リースバックは、自宅を売却しながら住み続けられる仕組みとして、高齢者の資金確保や資金繰り対策として活用されるケースが増えています。一方で、3,000万円特別控除の適用可否、相続税評価額への影響、買い戻し時の税負担など、通常の自宅売却とは異なる税務上の注意点があります。利用を検討する際は、契約内容を十分に確認し、早めに専門家に相談することが大切です。


