
2026-07-03
税金・節税少額減価償却資産とは?10万円・20万円・30万円の違いと特例を税理士が解説
事業で使う備品や設備を購入したとき、取得価額によって「全額費用計上」「3年均等の一括償却」「中小企業者等の特例による即時計上」「通常の減価償却」と処理方法が変わります。10万円・20万円・30万円という金額基準の違いと選択のポイントを税理士が解説します。
パソコンや工具、店舗の備品など事業の用に供する資産を購入したとき、その取得価額によって税務上の処理方法が大きく変わります。「10万円未満なら消耗品費」「30万円未満なら全額経費になる」という話を耳にしたことがある方も多いと思いますが、後者は一定の中小企業者等に認められた特例であり、すべての事業者に当てはまるわけではありません。本記事では、取得価額の金額区分ごとの処理方法と、注意すべきポイントを税理士が解説します。
原則:取得価額10万円以上の資産は減価償却
税務上、使用可能期間が1年以上かつ取得価額が10万円以上の資産は「減価償却資産」として、耐用年数に応じて毎年少しずつ費用計上(減価償却)するのが原則です。例えば、取得価額100万円・耐用年数5年の機械であれば、毎年20万円ずつ(定額法の場合)費用計上します。一方で、一定の金額基準を下回る場合や、特定の要件を満たす場合には、取得した年に全額または一定額を費用計上できる特例制度が設けられています。
①取得価額10万円未満:全額費用計上
取得価額が10万円未満の減価償却資産については、取得した年に全額を必要経費(損金)として処理できます。これはすべての事業者(個人・法人を問わず)が適用できる原則的な取り扱いです。なお、取得価額の判定は資産の単位ごとに行いますが、一体として機能する資産は、一組の資産として取得価額を判定する場合があります。例えば、単価8万円のパソコンを10台購入した場合は1台8万円で判定できますが、組み合わせて初めて機能する設備については個別に確認が必要です。
②取得価額10万円以上20万円未満:一括償却資産
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、「一括償却資産」として3年間で均等に費用計上する方法を選択できます(法人税法施行令133条の2、所得税法施行令138条の2)。例えば、取得価額15万円のパソコンであれば、毎年5万円ずつ3年間で費用計上します。耐用年数に関係なく一律3年で償却できる点が特徴で、月割り計算も不要です。また、一括償却資産として処理した場合、固定資産税(償却資産税)の申告対象から除外されるというメリットもあります。
③取得価額30万円未満:中小企業者等の少額減価償却資産の特例
青色申告書を提出する中小企業者等(一定の要件を満たす法人・個人事業主)は、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、取得した年に全額を費用計上できる「少額減価償却資産の特例」(租税特別措置法67条の5等)を適用できます。なお、常時使用する従業員の数が500人超の法人等は適用対象外となるなど、要件が複数設けられていますので、自社が対象に該当するかは個別に確認が必要です。適用にあたっては、事業年度(年)を通じて全体で合計300万円が限度となります。ただし、この特例を適用した資産は固定資産税(償却資産税)の申告対象となる点に注意が必要です。一括償却資産(②)とは異なる点ですので、取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、②と③のどちらを選択するか検討する余地があります。
金額区分の比較表
| 取得価額 | 処理方法 | 対象者 | 年間限度 | 償却資産税 |
|---|---|---|---|---|
| 10万円未満(使用可能期間1年未満含む) | 全額費用計上 | すべての事業者 | なし | 対象外 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産(3年均等) | すべての事業者 | なし | 対象外 |
| 10万円以上30万円未満 | 少額減価償却資産の特例(全額即時) | 青色申告の中小企業者等 | 300万円 | 対象となる |
| 30万円以上 | 通常の減価償却(法定耐用年数) | すべての事業者 | ― | 対象となる |
不動産投資における活用例
不動産投資では、エアコン・給湯器・防犯カメラ等の設備交換が生じることがあります。まず、エアコン交換であっても、修繕費として処理できるケースと固定資産として計上すべきケースがあります。固定資産となる場合には、取得価額に応じて一括償却資産(②)や少額減価償却資産の特例(③)の適用を検討します。例えば、固定資産として取得価額18万円のエアコンを取得した場合、②の一括償却資産(3年均等)か、中小企業者等であれば③の特例で取得年に全額費用計上する方法を選択できます。③を選べばその年の必要経費が大きくなりますが、償却資産税の申告対象となる点も考慮して判断することをお勧めします。
税理士からのアドバイス
10万円以上20万円未満の資産については、一括償却資産(3年均等)と少額減価償却資産の特例(中小企業者等のみ)のどちらを選択するかで、償却資産税の申告義務や当期の費用計上額が変わります。年間の所得状況や設備投資の規模、また300万円の限度額への到達状況なども踏まえて、どの処理方法が有利かを毎年確認することが重要です。処理の選択を誤ると修正が生じることもあるため、取得の都度、税理士に相談しながら進めることをお勧めします。
まとめ
減価償却資産の少額特例は「10万円未満は全額費用」「20万円未満は一括償却(3年均等)」「30万円未満は中小企業者等の特例(青色申告・年300万円限度)」という3つの基準を軸に整理できます。それぞれ適用要件や償却資産税への影響が異なるため、取得価額と事業者の区分を踏まえて適切な処理方法を選択することが大切です。


